ちっっさい呟き

のにょ

独神殿が毎晩寒いとおっしゃるので、拙者が布団を温めておこうかと思いまして。

だったら湯たんぽ入れてくれればいーの!
身体じゃなくて!!

独神殿。その言い方は少し……ソワソワしますな。

するなよ!!
#小話
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のにょ

現パロでさ、事務仕事の夢主がハロワに行くの。
今日はどこで外食しようかな。
カレー?
いやいや、この後会社戻るもんダメダメ。
でもダメって言われるとナン付きのカレーが食べたくなるよねぇ。
なんて脳内で独り言。

自分の番になって立ち上がり、すれ違う男に見覚えがある。
二度見した。
あれ、服部君?
地元の有名人の?
ハロワ!?
え、なんかの社長だって……倒産したの!?

モヤモヤしながら仕事を済ませ、帰ろうとすると「おい」と話しかけられる。

は、服部君…久しぶり…卒業式以来だね。
そうだな。

気まずい。仕事の話はできないしどうすれば。

…相変わらずわかりやすいやつだ。ただの手続きだ。なんせ人数が少なくてな。ついでに手続きを行うこともある
そ、そっか! 良かった!
倒産したのかと思って気まずかったよ
馬鹿にするな。貴様こそ、職探しか?
会社の手続き!


偶然会った2人が仲を深めていく話
#小話
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のにょ

びくっ。
独神が体を震わせる。

「……あのさぁ」

机に落とした菓子を拾いながら、独神は来訪者に目を向けた。

「いきなり、話しかけるの、やめ、って言ったよね?」
「聞いた覚えがあるような……ないような」
「何度目なの!」

独神が怒ると、すまぬすまぬと悪びれなくヌラリヒョンは謝った。

「ていうか、ここ気配ない奴多すぎるのよ。さっきだって誰もいないと思って着替えようとしたらハンゾウが出てきてすっごい顔で見てるしさぁ」
「いや、謁見の間で着替えをしようと試みる其方に非がある」
「最初からいるって言うなり、音出すなりすればいいでしょ。なのにだまーってくるんだから。油断するでしょ、私が」

独神はなおも続ける。

「お菓子くらいなら落ちようが食べるからいいけど、筆の時なんて最悪。何度机が染まったか。面倒だから書き物してるときは入室禁止の札ぶら下げることにしたんだから」

そんなのあったのか。
と、毎日出入りするヌラリヒョンは判っていなかった。

「ハンゾウはちゃんと足音立ててくれるようになったよ? ……まあ、毎度毎度馬鹿にした顔はしてくるけど。気配がわからないくらい普通でしょうが」

ぶつくさ小言を言う独神を、ヌラリヒョンは目を細めて見ていた。

(脅かすのが儂だけになるまで粘ってみようか)

#小話
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のにょ

ツクヨミ飯を先に食べたほうが勝ち。みたいになるのか。

「造作もない」

と言って一口食べたハンゾが固まるとか。

「こんなの無理だって!(独神ちゃんの前で良い姿見せたいとか言ってられないだろこれ!)」

と言って食べさせられたコタロがいたり。

「とってもおいしい」

と言って、食べるビンボウガミがいたり(悪食)

黙々と食べるショウトクタイシがいて、すげーってみんなで思っていると。

「舌に付く前に回復術を施せばなんとか。集中しているので失礼」

なんてことしていたり。

#小話
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のにょ

◯◯しないと出られない部屋。

そこに独神とヌラが閉じ込められる。
扉の上にデカデカと書かれた文字に独神は後ずさった。

「……。

顔を動かさずヌラリヒョンを見る。
動揺した様子はない。
それはそうか、もう何度もしたことがあるんだろう、私と違って。
独神は頭を抱える。
今までしたことはない。誘われたこともない。
独神という立場が、そういうものを持ち込まなかった。
人族と違い、跡目探しに必死になるものでもなく、する理由がなかったのだ。

「……主。

独神は身体を固くした。

「この空間、時間はどうなっているのだろうな。呪術なら其方も多少は明るいだろう?」

冷静な発言に独神も緊張感が薄まる。

「そうだね。多分だけど時空が完全に切り取られてるから、ここで一日経っても、現実ではおよそ半刻くらいじゃないかな」
「となると其方の不在に不信感を抱いてもらえぬ、というわけか」

救助は望めないという事実に、また気持ちが重くなった。
どうにかしなければ。

「……あの」

ヌラリヒョンはどかりと座った。

「つまり、其方はここでなら十分休息が取れるというわけだ。ほら、そう立ってないで座ると良い。時間の乱れを有効利用しようではないか」

躊躇いを顔に出した後、独神は座った。不安は尽きない。三角座りを保つ手に力を込める。

「じたばたしても仕方あるまい。食料もない今、下手には足掻けぬよ」
「あー……。まぁ……うん。……そうかも」

不安にさせない気遣い。どちらが主かわからない。
独神も少しだけ冷静さを取り戻す。

「今のところ空間に異常はない。本当は話さずに黙って体力を温存すべきだろうけど、話さないでいると狂ちゃいそうだから話すね。ヌラリヒョンは無理に相槌をうたなくていいよ」
「儂も思考整理がしたい。雑談は大いに歓迎だ」


という導入なのに、普通にする話。
えぐいことに、挿入時点で「した」とみなされて、そのままの姿で現実に返される。
出られた。
でもふたりとも終わってはいない。
なんなら外だとえぐさが増す。
で、結局するみたいな。
前半の冷静さどこいったねん、みたいな。

#小話
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のにょ

「ハンゾウってかわいいよね」

と独神が呟くと、一瞬の間があったのち、

「そうかも……? ふわふわだもんね。暖かそうだし」

と要領を得ない返答が英傑から返ってくる。
主はハンゾウ自身ではなく、ナバリのことを言っているのだと解釈されているのだ。

ハンゾウが態度を変えるのは独神の前だけであり、他のものからすれば何を考えているのかわからない人でしかない。
不遜な態度のくせして、慎重で、独神に近づきたがっているのに、近づかないでいるところがいじらしくて可愛い。
なんて思っているのは独神だけ。

「(あの困った顔、好きなんだよねぇ……)」


#小話
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のにょ

今よりもっとつよい武器を作れるという珠を探しに来た独神一行。

「…ここのどこかにあるのよね?

独神は見渡す。自身を中心に広がる田を。
広大な平野に作られた田のどこかに落ちているというのだ。

「占いではどう?

カーン

「見えないねぇ。あ、けど追加料金があればあるいは
「無理ってことね

撃沈するナリカマ。

「田植えを手伝っていれば全部の田に入るから分かるって言うけど…
「口実さ。人手を駆り出すための

ナリカマの言葉に独神は曖昧に笑う。
都合よく使われている自覚はあるが、今のところ人海戦術しか方法がない。#小話
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のにょ

魚釣りに行く。
すぐその場で加熱調理してくれるカグツチ。
余計なこと話すと焦がしちゃうから黙って燃える様子を見てる。
そしたらまた焦がしちゃった。

え? どういうこと?
うっせえな。

沈黙に動揺して焦がしちゃったカグツチ。
結局独神と二人だといまいち集中できない。#小話
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のにょ

有力者に会うために、村娘風の装いで外出する独神。
そんな中悪霊が来て、独神であることがバレてしまう。
独神はバレたなら、と自分を囮として使って逃げる。
村人から遠ざけるよう山の方へ向かっていく。
ただお出かけ着なので下駄はズボズボと土にめり込む。
裸足のほうが早いと脱いじゃうのだが、そのときにハンゾウが助けてくれる。

それで逃げられるとでも。
できるでしょ。
貴様のすぐ横にクマ用の罠があってもか。

よく見ると罠。
絶対に逃さないという意思を感じるツヨツヨな罠。
さーっと血の気が引く独神。

あとは任せろ。主は黙っているだけでいい。

と、本当になんとかしてくれるハンゾウ。
その後落ち着いてから有力者との話も終わり、帰ろうとする。
だが有力者が独神の汚れた姿を不憫に思って泊まってはどうかと提案。
返事をする前にハンゾウが断る。

既に手配済みだ。警護にも英傑を用意している。
有力者はそれに納得して何もなかったのだが。

…あの時素直に泊まってもよかったんじゃない?
立場に縛られない話もできたでしょうに。

独神がそう言うとハンゾウが拒否。

襲われたばかりの町なんぞやめておけ。安全を第一に考えろ。

そんなこと言うけど、内心は独神を他の者に見せるのが嫌なだけ。
なんだかんだ英傑たちで囲っておきたいのだ。
少なくとも英傑は独神に手を出す者がいないから。
最低限の信頼をしている。

用意した宿に行くと、独神は英傑に抱きつかれ心配したと怒られ、甘やかされる。
ハンゾウは仕事が一段落したと、警備に注力する。

#小話
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のにょ

俺を選んだこと。後悔させない。

とまで言えるハンゾウは、色々イベントないと駄目かも。#小話
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のにょ

ハンゾウを好きになった独神。
ハンゾウにむちゃくちゃ逃げられる。
ハンゾウは独神を嫌ってなどいない。むしろ好き。
だからこそ、関係性を考えて近づかないほうがいいと思った。
独神が裸で迫ったとて、一時の感情に流されまいとする。



これがモモチだったら普通にいける。
俺を選ぶか。見る目はあるようだな。
くらい言ってもいい。

卑屈さがないんだよな。自信がある。
伊賀と言いながらも、個人でやってるからかな。
ハンゾウは伊賀に縛られてるから、軽率な行動は取れない。

#小話
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のにょ

独神が寒いからと、報告の度に手を握ってくる英傑たち。
カラッとしているもの。
ジトッとしているもの。
カサカサとしているもの。
ゴキゴキとしているもの。

だいぶ違うよなあ。

なんて思う独神。
と、反面、勇気を出して独神と接触するものも少なくない英傑たち。
#小話
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のにょ

こんな寒いのに、みんな元気だね〜。

こたつに入った独神が呟く。
今日は来客もないからと半纏を着用して防寒対策には抜かりない。

ワカサギじゃないんだから。

池で釣りをする英傑。
大きな体を丸めて鯉を釣るのに必死だ。
一度暴れれば地震を起こす神だというのに、器用だなと思う。

#小話
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のにょ

「廊下が冷たい季節よね。

ペタペタと廊下を歩く独神。

「足袋持ってくればよかった

足の指を丸め、ペンギンのように歩く独神を尻目に、半裸で走っていく英傑の姿。

「……神も妖もよくやるわ

人に近い独神は寒い寒いと言いながら部屋へ帰った。
#小話
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のにょ

「あ、コタロウ! ちょうど良かった! 余ったから食べて」

 馬鹿じゃないの。と一言言うのは簡単だ。
 だからコタロウは少し考えた。

(いっそお腹が壊れるまで食べれば……。独神ちゃんも自分の愚かさを猛省するかな。そうすれば僕がどんな我儘言っても、罪悪感で聞いてくれそー。僕が一生治らないでいれば、ずっと僕についてくれるよね?)

 コタロウはにこりと笑った。

「いーよ! 独神ちゃんの手作り大好きだからね。いくらでも食べちゃうよ。なんなら独神ちゃんも食べてあげようか?」
「喜んでくれて良かった。じゃあ他の人にもあげてくるね」

 コタロウの冗談に触れずに、独神は次の獲物を探しに行った。
 コタロウは山のようなドーナツを見て、小さく息を吐く。

(……食べるのは良いけど、独神ちゃんのことだから他のヤツらも同じ目にあわせてないかな。そうすると僕の努力も無駄になっちゃうんだよねぇ)

 そもそも、こんな甘い匂いのするものを食べては諜報活動に支障がでる。
 コタロウは部下を呼びつけ、指示を与えていった。

#小話
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のにょ

「はいどーぞ」

 差し出された輪っか状の洋菓子にヌラリヒョンは眉尻を下げた。

「今日は虹色なのだな」
「そうそう! 多色にするとなんだかドーナツのポテンシャルが上がった感じがする!」

 ヌラリヒョンは心の中でため息を付いた。
 毎日のように食べさせられていて、今やどうやって笑顔で受け取っていたか忘れた。

「(ガシャドクロにやるか……)」

 下賜されたものではあるがむりやり食べることはしない。
 できない。さすがに飽きた。

「……其方の目指していた味にはたどり着いたのか?」
「たまに。でも何個も必要だから」
「大変だな」

 自分が。

「あと一ヶ月くらいでケリをつけたいと思ってる」
「応援しておるよ」

 明日にでも終わらせて欲しいが、そういうものでもないらしい。
 ヌラリヒョンは一口だけ食べて茶で流した。
 食べたくなかろうとも、一個だけは食べきると決めている。

「あ、他の子にもあげてくるね~」

 ヌラリヒョンは小さく手をあげて、独神を見送った。
 姿が消えた瞬間、大きなため息を憎き穴に吹き込んだ。

#小話
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のにょ

#小話
いい加減にしろ。
と、ハンゾウがお決まりのツッコミをする主従もよい。

こんなふざけたやつが主とは頭が痛い。
その割には私が仕立てた着物取りに行ってくれたね。
たまたまだ。通り道だったからな。
またまたぁ〜。照れちゃって。
下らん事を言っている暇があるなら働け。

言い合う関係もよい。
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のにょ

#小話

雑談相手ってほどでもない。
仕事しあってる。
でも、数時間に一度会話をする。
一言二言話したらまた仕事。
独神とハンゾウはそういう関係もいいな。
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のにょ

独神
「今日食べた栗の岌希《けーき》美味しかったよ!」


ハンゾウ
「そうか」
(覚えておいて、後日機会があれば買う)

コタロウ
「僕食べてないんだけどー? いつ買いに行く? 今日? 明日?」
(ずるいって言うのも有り。相手にあえて心理的負担を与える)

ヌラ
「良かったなあ」
(栗まんじゅうのことを考えている)

キンタロウ
「取ってきたぞ!! これでまた食べられるだろう!」
(栗の木を根っこから持ってきた)
#小話
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のにょ

 オオワタツミを探したが、なんでもタマヨリヒメを追いかけて行ったとかで、周辺にはいなかった。
 探している最中、代わりにヨルムンガンドに会った。

「ドクシンさんまだ海駄目なのかよ」
「腰が引けちゃって」

 ヨルムンガンドは呆れたように言うと、突然提案した。

「……オレ様が連れてってやるよ。口の中なら良いだろ」
「中!?」

 独神が驚く間もなく、ヨルムンガンドは独神を抱き上げた。そして瞬く間に巨大な蛇の姿へと変化する。独神は大きく開かれた口の中へと包み込まれた。
 そのまま海へと向かい、深海へと潜っていく。


#小話
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のにょ

「あのね」

 独神が静かに口を開いた。

「サトリをあまりいじめないで」
「……承知した」

 ヌラリヒョンは反論することなく、静かに受け入れいた。

「だが、気を張ってばかりでは覚《さとり》以外にも気取られるぞ」
「その点についてはありがとう。なかなか平等にとはいかないわね」

 手を振って、ヌラリヒョンと別れた。

「ヌラリヒョンちゃんは」
「そこで別れた。暑いから涼むって」

 サトリは独神の心を読もうとしてやめた。知り過ぎて傷つくのは自分だ。覗いてはいけない深淵があることをサトリは嫌になるほど判っている。
 ヌラリヒョンと別れたその事実だけを見る。

「えー、たい焼きなのー? 暑いのに」
「かき氷の方が良かったなら一緒に行こうよ。持ってくるまでに溶けちゃうから」
「まあ、食べないわけじゃないけど」

 あまり嬉しくない選択だった。微妙なところ。好きでもなければ嫌いでもない。独神が選んだわけではなさそうなのが、余計に気に障る。周到に独神と距離を取らせてくる意図が透けて見えるようで。
 ヌラリヒョンの心の奥から聞こえてきた声を思い出す。

「こういう時こそ、主から手を離しておかねば、他の者の不満が噴出する」

 正論だった。理解はしている。でも離れがたい。だから強制的に引き剥がしに来たのだろう。
 花火まではまだ時間がある。その間、自分が傍にいては……。

「主ちゃん。……ちょっとだけ頭撫でて」

 独神はサトリをぎゅっと抱きしめた。見透かされている。サトリは唇を固く結んだ。

「アタシも出店回ってくる。主ちゃんは気にせず遊んでて。でもみんなの目が届くところだけだからね!」

 そう言い残して、サトリは立ち去った。
 一人になった独神は、ふうっと深いため息をついた。

「私が何人もいればいいのに……」

 木陰で静かに休んでいるうちに、いつの間にか眠ってしまった。
 目を開けると、大きな猫がそばにいた。

「毛布かと思ったわよ」

 独神はナバリの柔らかな毛を撫でる。

「ご主人は? 仕事?」

 返事はない。独神は海岸を眺めた。英傑たちは海で遊んでいる。

「……楽しそうで良かった」

「できるならあなたのご主人にも楽しんでもらいたいけど、難しいわね。休む方が疲れるなんて言うんだもの」
「そういえばハンゾウって泳げるのかしら。忍だもの、きっと延々泳げたりするのよねきっと」
「出来ないことを探すのが難しいわね。さすが。あなたのご主人は優秀ね。嫉妬するわ」

 ナバリは賢いが、人の言葉は話さない。
 独神の独り言をいつまでも聞いている。
 独神は、少し物足りなくなった。

「……ハンゾウ」

 虚空に向かって呟くと、すぐに気配が現れた。

「やっぱり近くにいたのね」
「監視は必要だろう」

 姿はなく、声だけが聞こえる。

「気を遣ってナバリだけ置いていたのね」
「適材適所だ」
「至れり尽くせりね。怖いくらいよ」
「少しは気分転換になったか」
「まあね。みんなが楽しそうだと私も嬉しいわ」
「貴様も傍観者だな」
「独神は裏方だから。先陣切って騒ぐのは得意じゃないの」
「よく言う」

 ハンゾウが姿を現した。

「どいつもこいつも今夜、貴様が誰を選ぶか気にしているぞ」
「知ってる。みんなで見ればいいのに。隣が二つも空いてるから」

 隣の席を英傑達が奪い合う光景が目に浮かぶ。自分を慕ってくれるのは嬉しいが、いつも心苦しかった。

「本当は誰がいいんだ」
「あなたまで探るの。いやらしいわよ」
「他意はない。お膳立てはしてやる」
「……。そういえばさっき水球で遊んでいた子が私の隣をかけて勝負してたわね」
「してたな。戯言だ」
「乗ってあげましょうか。折角だから」

 特定の誰かといたいという欲求はない。いや、抱けないというのが正しい。
 誰か一人を選んだら、どうなるか。ろくなことがないだろう。
 そんなことばかり考えてしまって、気持ちがそういう方向へ向かわない。

「少し休んだからもう一回海でも挑戦しようかな。怖いから泳げる子に頼もうかと思うんだけど、誰がいいかしら」
「オオワタツミでいいだろう。万一の時には海を割る」
「そうね」

#小話
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のにょ

「其方も熱心な事だ。しかし主は息抜きで来ているのだぞ。其方が世話を焼き過ぎてはどうかと思うがなぁ」
「サトリ。心配してくれてるんだよね。でも今日は他の英傑もいるから、楽にして良いんだよ」

 独神の心配そうな言葉に、サトリは胸に大きな傷を負った。同時に、狡猾な老妖への嫌悪が込み上げる。
 こういう巧妙な心理操作が、サトリの最も嫌うヌラリヒョンの手口だった。

「もう。主ちゃんったら。アタシは主ちゃんとくっ付いていられるだけで癒しなんだよー」

 サトリは思い切り抱き着いた。それなりに自信のある胸を押し付けると、さっきまで無反応だった独神の目が泳ぐ。
 勝った、と思った。

「主も嬉しそうだな。サトリの気持ちが伝わったようで何よりだ」

 ヌラリヒョンの微笑みの奥で、嘲りの感情が渦巻いているのをサトリは読み取った。「なるほど。しかし子供っぽい甘えに過ぎぬな」という冷たい評価が聞こえてくる。
 なんとでも思えば良い。独神には触れさせてなるものか。

「サトリ。仲間同士なんだからそんなに敵視しないで」

 独神のやんわりとした諫めに、サトリは力なく腕を下ろした。普通に甘えて抱き着くだけなら、独神は受け入れてくれただろう。しかしヌラリヒョンに対する露骨な敵意は、優しい独神を困惑させるだけだった。

「そうだ。なにか買ってきてあげるわ。サトリは日陰にいて」

 独神が距離を置こうとしている。サトリの心が沈んだ。自分で自分の立場を悪くしてしまったのだ。
 その時、ヌラリヒョンが立ち上がった。

「儂も手伝おう。荷物持ちはいた方が良いだろう?」

 完璧な間だ。サトリは心底悔しがった。
 祭りの出店が並ぶ通りで、ヌラリヒョンは足を止めた。

「儂はこういうものが好きでな」

 ヌラリヒョンがたい焼き屋で足を止めた。

「好きよね。あんこ」
「年を取ると甘いものが恋しくなるのだ」

 ヌラリヒョンは店主に声をかけて、熱々のたい焼きを三つ注文する。

「先のことは儂にも非がある。ここは詫びとして、な」

 そう言いながら、さりげなく支払いを済ませた。

「そんな、気にしなくても……」
「いや、受け取ってくれぬか」

 独神に一つたい焼きを手渡した。

「ありがと。頂くわ」

 独神が小さく頬張る。

「おいし」

 その無邪気な笑顔に、ヌラリヒョンの目が細められた。
 たい焼きを食べながら歩く二人の後ろで、独神の美しさに気づいた何人かの男性が振り返った。中には、あからさまに見つめ続ける者もいる。
 その瞬間、ヌラリヒョンが何気なく独神の腰に手を回し、恋人のように寄り添った。上下に分かれた水着で露出した腰に、彼の手のひらが直接触れる。柔らかく滑らかな独神の素肌の感触が、指先から伝わってきた。男性たちはその親密な様子を見て、諦めたように視線を逸らしていく。

「すまぬ。少々強引だったかもしれぬ」
「しかたないわ。あれが一番平和的だったもの」

 独神の理解ある言葉に、ヌラリヒョンはするりと手を解いた。しかし指先には、独神の肌の柔らかさが残り続けている。

「少し、刺激が強かったのではないか」
「なにが?」

 ヌラリヒョンが水着を指差すと、独神は嬉しそうに微笑んだ。

「選んでもらったの。これが似合うよって。私もそう思ってる」

 その無邪気な喜びようは愛らしい。

「けれど、困っちゃうわね。ジロジロ見られるは」

 独神が苦笑する。

「相手がいると見せれば良いのだ。サトリの元へ戻るまで腕を組ませてもらっても構わぬか?」

 ヌラリヒョンの提案は合理的で、断る理由がなかった。

「まあ……そうね。私も、あまり目立って独神と知られるのも避けておきたいから」

 独神が自らヌラリヒョンの腕に寄り添った。鍛えられた筋肉質な腕の感触が、独神の胸や腕に直接伝わってくる。歩くたびに、二人の身体が自然に触れ合った。
 ヌラリヒョンは内心で深い満足を覚えていた。予想以上に滞りなく、これほど自然な密着を実現できるとは。独神から積極的に触れてきてくれたことで、罪悪感すら感じる必要がない。周囲の男性たちは、明らかに恋人である二人を見て、完全に諦めたような表情を見せている。
 「保護」と「身分隠し」という二重の正当化を得て、ヌラリヒョンは独神との密着した時間を心ゆくまで堪能していた。

#小話
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のにょ

「なにやら楽しそうにしていたな」

 ヌラリヒョンの声が聞こえた。サトリは警戒を強める。見た目は感じのいい青年だが、とんだ腹黒である。サトリはいつもヌラリヒョンの前では気が抜けない。独神を攻撃する意思は見られないまでも、独占欲に満ち溢れており、時に強引な手段も取るからだ。

「こっちは必死だったけれどね。カグツチも途中から一人で歩こうとはしていたのよ。目が血走っていて危なそうだったけれど」
「火を呑み込む海は相性が悪いからな。死の危険に襲われながらもよくやるものだ」

 それもこれも、独神と海で遊びたかったから。サトリは勝手に心を読んでいたので知っている。カグツチの心理はいつでも単純明快なのである。目の前の大妖怪とは違って。

「お陰で私も少しだけ海には慣れてきたから。カグツチには感謝ね」
「主は優しいな」

 そう言いながら、ヌラリヒョンは独神の隣に腰を下ろした。サトリの存在も判っているだろうに、まるでいないかのように扱う。

「えー、せっかくお伽番になったんだから、主ちゃんの隣はアタシだよねー?」

 サトリはヌラリヒョンとは反対側で、独神と密着して座った。独神とは風呂の付き合いもある身だ。独神が拒否するはずがない。現に太ももが密着していても、独神は動揺することなく、ただあるがままに座っている。
 それはそれで悲しい気もするが、サトリとの接触を嫌悪していないのだから良しとしよう。

#小話
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のにょ

「(やっぱりこうなる!)」

 しかし、カグツチの心を読むと「柔らけぇ」「気持ちいい」という正直な感想の直後に「じゃねぇ! こんな時に主の身体に触るのはなしだろ!」「なんで抱き着いちまったんだオレ」「とにかくこのままじゃまずい。主を陸へ。オレもこれ以上海の中は耐えられねぇ……」と必死に状況を打開しようとする声が聞こえてくる。

「(真面目……なんだよねぇ)」

 サトリは複雑な表情で頬を膨らませた。怒りたいのに、カグツチの誠実すぎる思考に怒り切れない自分がもどかしかった。

 二人はよろめきながらも浜辺へと戻った。足が砂地に着くと、カグツチは猫のように独神から離れる。

「悪かった! ごめん! じゃあな!」

 そう言い残すと、カグツチは砂を蹴り上げながら一目散に走り去っていく。申し訳なさと、まだ収まらない衝動から逃げるように。

「あ、カグツチ……」

 独神が声をかける間もなく、赤毛の後ろ姿は浜辺の向こうに消えていった。

「(逃げた)」

 サトリは少しほっとした表情で呟いた。カグツチの心の中が手に取るように判るだけに、その必死さも理解できてしまう。

「あの子、大丈夫かしら……」

 独神は心配そうにカグツチが去った方向を見つめていた。

「火の神は主ちゃんが思ってる以上に凄いんだよ。陸にいるなら心配いらないって」

 庇ったのは不器用な誠実さに免じてだ。サトリならばいくらでも評判を下げてやれた。

「そのうち戻ってくるわよね」

 と、独神も深入りすることはなかった。

#小話
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のにょ

「腰が引けてるよ、主ちゃん」
「そ、そう見える……?」

 水着を着るまでは良かったのに、海に近づこうとはしない。

「どうしたの。怖い?」
「もう心を読んだでしょう?」

 サトリは舌を出した。気になったらすぐに心を読んでしまう。

「浅いところならいいでしょ」

 手を引いて一緒にいる。足が冷たい。

「悪霊が来ても、これならすぐ判るから」
「……情けなくてごめんね」
「気にしないで」

 独神にとって、海は悪霊を連想する。悪霊は大きな船で海からやってきたのだ。独神は何度も夢の中でその場面を繰り返し見ている。海辺の村は、悪霊の脅威に負けずに逞しく生きているというのに、独神である自分が、と情けなく感じるのは仕方がない。

「それより、早く不安な顔止めた方がいいよ。じゃないと、自分がなんとかしてあげなきゃって下心持ったひとたちが狙ってるから」

 独神は、え、と浜辺を見渡した。何人かと目が合い、すぐに目を逸らされた。

「……ね? 判ったでしょ」
「みんなの心配性も困ったものね」
「そういうことにしておいてあげるけど、今日は気を付けてね。水着なんだから。触らせちゃ駄目だよ?」
「そんな私が毎日誰かに抱き着かれているような口ぶり」
「してるでしょ実際!」

 独神はふふと笑った。仕えてくれる英傑に身体に触れることを拒否しない。
 その隙が良い時もあれば悪い時もある。
 心がよめるサトリはいつも悶々としていた。

「(早く主ちゃんが私の物になればいいのに!!)」

 頬を膨らませたって、独神は笑うだけ。




「主《ぬし》!」

 カグツチが駆け寄ってきた。火の神であるカグツチは水が苦手なのだが、今回は祭りというのもあってついてきた。

「水着姿は新鮮だな! 似合ってる」
「ありがとう」

 さっそくサトリが半目で独神を睨んだが、独神は気づかない振りをした。

「泳がねぇの?」
「ええ。もう少し慣れてからにする」
「じゃあオレもいていいか?」
「いいよ。じゃあ砂で遊んでいようか」

 二人が水がこないぎりぎりのところでしゃがむのを見て、サトリはその場を離れた。今傍にいた所で、相手にはされないという判断だ。
 水が苦手な二人は砂山を作っていた。

「折角だから道を通そうよ」

 お互いに端から掘っていく。湿った砂なので危なげなく掘り続け、最後に指先に軽やかな感触に変わると、砂だらけの指が触れ合った。

「できたぞ!」

 無邪気に喜ぶカグツチに独神は小さく微笑んだ。
 カグツチは立ち上がる。

「おっし。そろそろ覚悟決めっか! な、主も!」

 独神も立ち上がり、二人はゆっくりと海へ歩を進めた。
 足先。足首。ふくらはぎ、太もも。
 腰のあたりまで使って二人は止まった。

「……カグツチ、大丈夫?」
「お、おう。当然だろ。なんかあったら燃やせばいいしな」

 海の中。当然燃えるものなどない。

「ぬ、主こそ大丈夫か?」

 独神にはまだ余裕があった。だが。

「少し怖いから手をつないでくれる?」
「しょうがねぇな!」

 嬉しそうに手を繋ぐ。少し痛いくらいに手を握ってくる。
 その時、少し大きめの波が二人に向かってきた。

「やべっ!」

 カグツチが慌てて独神に抱き着いた。水への恐怖で反射的に一番近くにいる独神に強くしがみついてしまう。
 高貴な身分ゆえに普段肌を晒すことのない独神の素肌。普段の硬い着物とは違い、水着は薄い布だけ。カグツチの胸に押し付けられた独神の胸の柔らかさ、滑らかな肌の感触が直接伝わってくる。鍛え抜かれたカグツチの筋肉質な身体に包まれながら、独神の本来の柔らかな体型があらわになる。
 めったにない直接的な肌の触れ合いに、カグツチの身体が熱くなった。

「あ……」

 独神の息が止まった。頬が一気に赤らむ。

「ぬ、主……悪ぃ、つい……」

 カグツチは慌てて離れようとする。この感触にもっと触れていたい衝動を必死に抑えながら。が、足元が不安定でまたよろめく。

「大丈夫、大丈夫よ」

 独神が優しく支えるが、その際にまた触れ合ってしまい、二人とも真っ赤になった。お互いに腰が引けながらも、支え合わなければならないという衝動で離れることができない。
 浜辺ではそんな二人をどす黒い雰囲気を振りまきながらサトリが見ていた。

「(やっぱりこうなる!)」
 


#小話
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のにょ

「(独神が海に着いたと連絡がきた。てこたァ帰るまでには二刻かかる。調べるなら今だ)」


 八尋殿の正面の部屋である拝殿、その奥に独神の私室がある。オオタケマルは拝殿までしか足を踏み入れたことはない。奥の私室は招かれた者かお伽番だけが入れる。
 海水浴へ行った独神にお伽番も同行したため、今は不在のはずだ。探るには絶好の機会である。
 英傑達からの信頼が薄いオオタケマルは、まず姿を見られるわけにはいかなかった。独神の不在時に拝殿付近をうろつけば、悪事を企んでいると思われるのは当然だろう。
 機会を窺い、素早く中に入る。拝殿と私室は襖で区切られているだけなので、入室自体は簡単だった。

「(……つまんねェ部屋。幻覚でそう見せている可能性は零じゃねェ)」

 見回すと、部屋には長机、箪笥が二つ、飾り棚が一つに押し入れが一つ。押し入れには下の段に蒲団が一組、上の段には引き出しがあり、それぞれの英傑の名を記して個別に束ねられた、手紙や思い出の品々が収納されていた。

「(小まめなこった。一匹一匹に餌やって懐かせる手口か。犬の躾と変わらねェじゃねェか)」

 押し入れをさらに詳しく調べていると、奥の壁に目が留まった。

「(壁板の縁に擦れた跡がある。しかも新しい。こいつァ動かしてんなァ)」

 オオタケマルは急がず、まず壁板の四隅を軽く押してみた。右下の角が他より柔らかい。そこを起点に、ゆっくりと板を横にずらしていく。わずかな音も立てないよう、慎重に力を加えると、壁板が静かに横へ動いた。
 中から飛び出したのは蛇だった。思わず手で振り払う。

「なにやってんだよ。頭領はいないぜ」

 現れたのはオロチマルだった。蛇を使う忍である。

「悪ィ悪ィ。独神がいねェもんだからよ、護衛の抜けがねェか確かめてたんだ」
「護衛の確認で隠し場所なんて見つけるもんかよ」
「おいおい、疑り深ェなァ。だから盗賊は嫌われるんだぜ」

 きっとオロチマルは睨んだ。読みが当たったことにオオタケマルはほくそ笑んだ。

「(当たりだ。忍連中の中でも独神の信頼は相対的には低い。しかも気にしてやがる)」
「うっせぇな! 頭領は留守を俺に任せてくれてんだよ! さっさと失せろ。でなきゃ俺はあることないこと報告するかもな」

 独神との関係悪化は最も避けたいことだった。オオタケマルは肩を竦めて立ち去った。

「(留守は別の忍を配置してやがったか。だが、オロチマルといやチンケな盗賊だろ。……仲間に引き入れるって選択もありかァ? 突けそうな材料はまだまだありそうだしなァ)」


#小話
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のにょ

「主ちゃんはこっちだよね」
「主殿はこっちであろう」

 やいやい。なかなか決まらない。誰しも自分の選んだものを着てほしいから。見かねた独神。

「じゃあ私が選ぶ。恨みっこなしよ」

 あえて誰も触らなかった浴衣を選ぶ。

「水着も私が選ぶわ。みんなは楽しみにしてちょうだい」

 と言ってさらっと水着の戦争も回避。

 海へ着くと、みんなは独神の水着待ち。少し怖いくらい。独神も異様な空気に押されて着替えられず。

「私、足元だけピチャピチャするだけでいいわ」
「着ないと一緒に遊べないでしょ!」

 心が読めるくせ、独神を無理やり更衣室へ押し込むサトリ。着替えたあとはみんなに驚かれるお決まりの展開。

「(誰も触れていないようで安心した)」

 と、変な痕がなくて安心したり。
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のにょ

「海で花火大会があるんですって」
 と、独神。
 その一言でそわそわとする英傑たち。
「行、」
「行きたいよね!! じゃあ浴衣用意しよっか!!!!!!」
 独神の言葉を遮ったサトリの言葉に、弾かれたように英傑達は動いた。

「(でかした!)」

 みんなの心はサトリへの賞賛でいっぱいだ。
 独神は楽しいことは好きだが、憂い苦しむ民のことを考えてあまり祭りには積極的に参加しない姿勢を見せる。
 今回もそうだ。
「行きたいけれど、仕事が大事ね」
 と言って、行かない理由を作ろうとしていた。
 それを察したサトリが阻止したのである。


……まあ、そんなこんなで水着イベントだな。

#小話
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PROFILE

ふり~にが~としゃべってるようなところ。ネタバレにならない程度に小説の進捗を話している。あとはたまにくるってる。酒呑んで投稿する時はここ。